電気自動車が環境破壊を促進するとされる理由
結論
「なぜEVが環境破壊なのか」
EVは、原料調達、製造、廃棄時にHVやGVの数倍のCO2を排出するため、
年間1万km程度の走行を想定しHVと比較すると、
製品寿命も加味したトータルC02排出量が多くなる
「環境に負荷を与えない様にするにはどうすればいいか」
様々な環境で、様々な人が、様々な用途で使う物において、
全てを満足する万能な物は無い。
GVもHVもPHVもSHVもEVもFCVも、各人で適切に使い分ける必要がある。
「EV化による日本のCO2排出量への寄与度」
家庭用乗用車使用によるCO2排出は、日本の排出量の3.7%しかない。
家庭での電気使用によるCO2排出量はその倍あり、
環境に良いとは限らないEVを推進しても効果は無いに等しい。
更に発電によるCO2排出が、日本のCO2排出量の42%を占めている今、
ガソリン車をこれ以上規制し、EVをこれ以上優遇する事は、愚の骨頂である。
車の基礎
GV(ガソリン車)の原動機の主な部品に使われている主な材料
エンジン :アルミ
燃料タンク:単一樹脂
配管 :単一樹脂
EV(電気自動車)の原動機の主な部品に使われている主な材料
モータ :ネオジム磁石、銅、アルミ
バッテリ:コバルト酸Li、マンガン酸Li、電解液、黒鉛、銅
配線 :銅、塩ビ
製品寿命
GV :20年20万km
MHV:20年20万km(小容量バッテリのため積み替えがペイする)
HV :20年20万km(劣化を見越し余裕を持ったバッテリを搭載)
EV :15年10万km(航続距離に影響するためHVの様に使い続けられない)
理由
LCA(ライフサイクルアセスメント)
LCAとは、製品等に対し、その原料の調達から製造、使用、廃棄までの
環境負荷(CO2排出量等)の度合いを、時には製品寿命も加味し評価する方法
同価格帯の軽のGV同士であれば、
材料調達/製造/廃棄時のCO2排出量は同じと言えるので、
使用時のCO2排出量(燃費)で比較し、どちらが環境に良いか判断できる。
しかし全く異なる材料/異なる製造のGVとEVを
使用時のCO2排出量で比較するのはナンセンスであり、LCAで議論する必要がある。
使用時のCO2排出量は、ガソリンの燃焼/火力発電所での石油の燃焼を加味しており、
石油の採掘時や発電所の建設/解体時に排出するCO2は加味していない。
調達/製造から廃棄に、製品寿命も加え、
20年20万kmの移動で排出するトータルCO2を比較する
GVとEVは、経年劣化により燃費の低下と部品の交換が要求される事も加味し、
10~20万Kmの使用時のCO2排出量が0~10万kmの時に比べて高くなっている。
・原料調達
庭の地下4mの所に2000円が埋まっている事が分かっても掘る人はいない。
スコップの購入と5時間くらいかかる作業を考えると割に合わないからだ。
しかし5万円が埋まっているとわかれば、
スコップに加え、つるはし⛏が必用だとしても掘るだろう。
即ち価値ある物は、それだけ多くのCO2を排出してでも産出される。
ロンドン金属取引所での100kg当たりの価格
アルミ :2000円
コバルト:5万円
・製造
EVは、多くの材料を組み合わせている分、
それも銅の周りに絶縁体となる塩ビで被覆するなど
手でもできるような簡単な組み立てではないため、
製造時にも多くのCO2が排出される。
・使用
日本は原発依存度が低くいため、EVも使用により多くのCO2を排出する。
太陽光発電や風力発電で100%賄えば、0になるかというとそうでもない。
GVとEVのLCAと同様に、太陽光発電所と火力発電所でもLCAを考える必要がある。
・廃棄
GVのリサイクル率は99%であり、車が1000kgとすると、
焼却/埋め立て処分される量は10kgとなる。
EVはレアメタルなどお金をかけてでも、回収したい部材が使われているので、
10年後の技術進化も加味し、ほぼGVと同じリサイクル率が達成できるとする。
しかしEVはGVの1.5倍ほど重いので、同じリサイクル率でもゴミの量は多くなる。
加えてGVは構造的に分解し分別できるのに対し、
EVは分解/分別に化学的処理が必用であるため、
リサイクル時に排出するCO2は高くなる。
環境に良い車とは
上記の様に環境に悪いのはGV、EVの順となるが、それは上記仮定の場合であり、
各人の使い方次第では製造時のC02排出量が非常に少ないGV、
走行時のCO2排出量が非常に少ないEVが最も環境に良い場合もある。
GVを使った方が良い人
・年間走行距離が非常に少ない人(凡そ年0.5万km以下)
・月に数回高速で遠出するだけの人
EVを使った方が良い人
・年間走行距離が非常に多い人(凡そ年2万km以上)
・街乗りでだけでも年間走行距離が多い人(凡そ年1.5万km以上)
10年10万km乗った車に不具合が生じ、百万円近く修理費が必用となれば、
廃車とするのが一般的だが、5年しか乗っていなければ修理も選択肢に入る。
つまり使用年数が少なければ、
百万円近く費やしバッテリを積み替えるメリットが生じる。
乗用車のEV化が日本のCO2削減に与える寄与度
家庭用乗用車使用によるCO2排出量は日本のCO2排出量の僅か3.7%しかない。
EVの使用が環境のためになる人が全てEVにしても、その効果は薄い。
家庭での電気使用によるCO2排出は、車の倍近くある。
つまり家庭からのCO2排出を抑えるのに最も効果的なのは、
LCA的に環境に良い発電所に切り替える事である。
当然ながら電気は家庭以外でも使われており、
日本全体の電気使用によるCO2排出は、
日本のCO2排出量の42%を占めている事から、
このLCA的に良い発電所へ切り替えは国全体でも絶大な効果を示す。
CO2削減には、次に産業部門、運輸部門が効果的である。
運輸部門としては、鉄道貨物、水素/LPGトラックの活用が効果を示す。
大型トラックは年7万km、中型以下でも年4万kmと
乗用車を遥かに超える使用頻度なのでEVでもLCA的に環境に良さそうだが、
航続距離,充電時間,重量の問題から、場合によってはそうとも限らない。
航続距離が短く充電時間が長いという事は、運送効率が悪くなる。
更に、バッテリはエネルギ密度が低いため、車重が増加し、
その分積載重量が減るため、運送効率が悪くなる。
つまりEVにするとトラックの台数を増やす必要がある。
トラックを多く作る分、しかもCO2排出が多いEVトラックを多く作るとなると、
高速がメインの長距離輸送のトラックではLCA的に環境に良いとは言えない。
EVと原発 \ EVと国益
発電時のCO2排出量が0で安定供給が可能な原発は出力抑制が困難であるため、
原発設置限界は電力需要が最低となる深夜の電力使用量によって決まる。
使用量がフラットになれば、原発の割合を増やせる。
電力使用量をフラットにする取り組み
・夜間電気料金の値下げ→蓄熱設備の普及、工場の24時間化
エコキュート:夜間に電気で沸かして貯めた熱湯を昼間に使用
蓄熱冷房:夜間に氷や冷水を作り、昼間に冷房として利用
蓄熱暖房:夜間にレンガを温め、昼間にその放熱を利用
・水力発電
深夜に水力発電の下のダムから電気で水を汲み上げ、昼間に水力発電する。
但し、水力発電の上下に都合よくダムを設置できる場所には限りがある。
・蓄電池
蓄電池は、製造時に出すCO2が膨大なため、昼間に火力発電をした方が環境に良い。
・水素蓄電
原子力発電も、水素の生成も、水素発電もCO2は出無いが、
建設と解体時のCO2排出を考えると、変換効率を更に高める必要がある。
EVが普及してくれれば、昼間の需要以上に深夜の需要が増えるため、
電力会社としては、お金をかけず電力使用量をフラットにでき、原発を増やせる。
日本の国益
LCAの悪さと下記理由により静観していたが、天下り先の少ない環境省が
天下り先を増やすチャンスと考えEVを推進し始めている。
◆各指標に占める自動車産業の割合
輸出額 :24%
製造品出荷額:20%
就業人口 : 9%
産業別研究費:20%
設備投資額 : 5%
◆米欧中以上にエネルギ資源の他国依存率が高く、
EVの普及で有事のエネルギリスクの低減が図れるが、平時の国力衰退に繋がる
◆バッテリー材料のレアメタル等は中国など他国依存となるため、
ガソリンの使用量削減による貿易収支の改善が期待できない
米国の国益
LCAの悪さと下記理由により静観しているが、
一部州では環境に良さそうなイメージのあるEVを推進する事で票集めを行っている。
◆車社会のため都市部でもストップアンドゴーが少ない
◆ロードトリップによる長距離移動が多い
◆国土全体に都市が点在し国土も大きくEVのインフラ設備が追い付かない
◆大排気量がステータス化され、米国自動車会社が大排気量を得意としている
欧州の国益
欧州の自動車に対する環境規制概略
[①×②の合計]÷[総販売台数]=2000÷250=8(1台当たりの走行時CO2排出量)
1台当たりの走行時CO2排出量が、10未満なら罰金無し、
10以上なら段階的に販売台数1台につき〇〇万円となっている。
※販売台数が少ないメーカは優遇措置有り
HV技術やHV関連特許は日本の独占状態になっているため、
①の部分をLCAで評価すると、EVで得点を稼ぐことができず、
欧州の自動車産業が大打撃を受けるため、EVは絶対的に環境に良いとしている。
中国の国益
欧州と同様の理由の他、エンジン開発の技術力が未熟であるため、
ほぼ変わらないスタート位置に立てるEVの普及を促したい。
※エンジンは、熱/機械/流体/材料力学と多岐にわたる工学知識の結晶であり、
そう簡単に技術力を高める事ができない。
更に郊外で環境破壊をしてでも、深刻な都市部の大気汚染を抑制したいため、
EVは絶対的に環境に良いとしている。