ボルボ S60 カーレビュー

レビュー対象

車種   :ボルボ S60 Drive 2011年式
車両情報 :Safety PKG(対人自動ブレーキやBLIS等) 、革シート、スマートキー
新車価格 :455万円
レビュー期間:5年、2015年~2020年
レビュー距離:7万km(スポーツ走行含む)
 

総評

総合評価:8点(10点中)
トランクには、買い物袋が倒れない様にするフックやパーテンションがあるなど所によっては気遣いがなされている。ロードノイズが気になるなど改善点はちょこちょこあるが、自分で簡単に改善できるか我慢できるレベルである。故障は多く看過できない。しかし、安全性が極めて高く、安全性を考えた場合はそれだけで選ぶ価値がある。
 

詳細レビュー

走行性能

〇加減速
加速は、ターボとはいえ1.6Lとは思えないほど十分である。しかし自動車税的に1.6Lより1.5Lの方が良かった。ターボラグはあるものの、キックダウンの時間ほどしかないので、そこまで気にならない。DCTの採用理由が燃費を目的にしているから、クラッチ保護のためだろうが、シフトアップにかかる時間がDCTとは思えないほど遅い。

急制動をかけると、つんのめった感じになり、ステアリング制御に神経を使うことになる。前後重量配分はそこまで悪くないので、ダンパーとサスが柔らかいためであろう。

〇走破性
垂直に登ると登りきった時に腹を擦るような上り坂に対し、斜めに登ることでそれを回避しようとすると、前輪の片方が完全に浮くことになるが、そんな場合でも浮いたなと思ってからすぐにそのタイヤにブレーキがかかることで、二駆でも不安を最小限に登りきることができた。

〇旋回性
旋回性能自体はいいが、このクラスのセダンとしてはロールが激しく能力を十分に発揮できていない。また乗員としても、非常に不快となるため、速度を余計に落とす必要に迫られる。

パワステの補助率を3段階で変えられるのは、個人の好みに合わせられるだけでなく、レジャーで疲れた後にも助かる。速度に応じて重さが変動するパワステのレスポンスが悪く、少し急激な減速をすると低い速度域に入ってもハンドルが重いままで少し驚くことになる。

〇駆動音
全くの偶然だろうが、加速時に高回転まで回すと、このクラスではトップレベルの気持ちのいいエンジン音が聞こえて、運転を楽しくしてくれる。

 

乗り心地

〇振動
路面からの入力は良く抑えられている。

〇静粛性
アスファルト路面(表面に細かい石の凸凹があり、転ぶと手が擦り切れそうな路面)を走ると、「ゴー」というロードノイズが非常にうるさい。純正のミシュランプライマシー3は、硬化ひび割れが早く、そのうるささを助長させている。ダンロップVEURO VE303にしたところ、かなり改善された。
エンジンマウントなどの劣化により、新車登録から6年ほどで回転数よっては、ダッシュボードの右側から、稀にカタカタと耳障りな音が聞こえ、ステアリングも共振する。

〇シート
革シートは鞣しがしっかり施されていて肌触りが良く、サイドサポートもしっかりしている。シートの上下前後方向の可動域が大きいので、スポーティに乗りたいときはかなり目線を落とせ、後席に人を乗せる時は助手席を潰す勢いで後ろを非常に広くできる。

 

安全性

 IIHS TSP+では全試験項目で最高評価を得ており、Euro NCAPでも優秀な成績をとっており、ミリ波とカメラによる自動ブレーキを搭載しており、2015年時点において間違いなく世界一安全な車と言える。ただ、走行車への注意喚起のためトランクを開けた時に三角表示板の反射部の一部を見せるようにしていない、まだ改善の余地は多々ある。

見通しの悪い角から出る時に、車のフロント部についたカメラで左右の確認ができ、それが左右分割表示なのは感覚的に理解しやすく良い(2代目XC90以降につけられたカメラは、360°になったので、フロントだけを表示した場合でも左右分割表示では無いので感覚的に理解しにくい)。

ACCの設定は直観的で分かりやすいが、渋滞や信号などで以前から完全に停車している車や、前走車や自車が車線変更したその先に以前から止まっている車には、ボルボに限らずACCが反応しないので注意が必要である(但し2代目XC60以降、カメラが認識できる場合は止まる)。また、ACC作動中のカーブでは、前走車がいないかロストした時には、アクセルをオフにするか進入速度以上にならない様に改善するべきである。

ワイパーの最大速度がやや遅い。

良くない所も含め、ボルボの安全性に関する詳細は↓

ユーティリティ

〇スイッチ・ナビ・オーディオ
ナビやオーディオ操作の時に使うステアリングにある選択や決定のボタンが、ローラーになっていてコロコロ回して選択、ローラーを押して決定というのが、選択肢が豊富な時にぽちぽち何度もボタンを押して候補を移動させる必要がなく、非常に便利である(2代目XC90以降は無くなって残念である)。

リアシートなどからでもナビやオーディオ操作ができるように、家庭用テレビのリモコンの様な物があって便利である。

センターコンソールのハザードとエアコンの風量ダイアルを逆にしてハザードを運転席側に持ってくるべきである。これは右ハンドル車だからという事ではなく、左ハンドル車でも同様に使いづらくなっている。

2015年以降のモデルは、ナビの地図情報をUSBで更新できるようになっているが、2014年前のモデルでもディーラーでその機能をインストールし、2015年以降のモデルと同様にUSBからインストールできるようになるのは素晴らしい。しかし、ナビ画面が小さく、テレビの画質が悪い。また、HDDナビ(デンソー製)とは思えない程に反応が遅く、ナビの施設検索時の各施設表示の順番に一貫性が無く不便である。更にTVをつけて走行している時は、番組情報を映すのではなく、ナビ画面に移行させるべきである。

走行距離/時間と平均燃費を表示させられる機能は便利である。また毎回リセットせずとも、連続4時間以上電源OFFの場合に自動でリセットされるのも良い。但し、消費燃料も表示してくれると、交通費の割勘などの時に便利である。

〇積載性
ランクルーム中央部を支点に垂直に立てられるパーテンションがあり、その板にゴムバンドとフックが付いており、買い物袋等をかけておけるのが非常に便利である。レディースのゴルフバッグやメンズのスモールサイズのゴルフバッグだけだがトランクルームに横置きにできるのが良い。

6:4トランクスルーはありがたいが、センターシートのトランクスルーはスキーに行く自分でも使った事はない。

〇小回り
最小回転半径は、そこまで気になる事はない。

〇その他
鍵の「i」(インフォメーション)ボタンで、車のロック状況などが確認できるのは非常に便利である。鍵の防犯ブザー機能もいいと思うが、突起を付けた方がより良い。

スマートキーをオプションにして、1850mmの機械式駐車場で車庫証明が取れる様にした気遣いは素晴らしい。

外した燃料キャップをひっかけるのが、非常にやりにくい。

デイライトを推進しているのかもしれないが、オートライト機能も付いていた方が良い(2013年モデルから搭載)。

シックカー症候群防止のための乗車時自動換気機能はありがたいが、夏場の換気にも役立つのでわざわざ4年で作動しなくなるようにしないでくれた方がありがたい。

エアコンフィルターでPM2.5のカットに気を利かせられるなら、ガラスのUVカット率を告示して欲しい(サイドガラスは運転席部も少し着色が入っているので、ある程度はUVがカットされていると思われる)。

昔からあるが、ボルボのフロントガラスにあるクリップは何かと役に立っている。ドアポケットがあれば車から出る際にパーキングチケットを忘れずに済むので、ドアポケットは運転席にだけでも付けてくれるとありがたい(ボルボ用のドアポケットが社外品である)。

シートメモリは2つで十分だと思う。

 

 デザイン性

サイドから見た時に、前輪が少しAピラーに近く窮屈な印象を受けるデザインではあるが、Cピラーとトランク上部によるラインに角を設けない事で流麗なデザインに仕上げている。また、リアランプによるデザインが上手い。

フロントシートの下のエアコンの吹き出し口(三角のプラスチック部分)が助手席を最大限前にするとが目立つので短くした方が良い。
鍵のデザインが安っぽい(キーカバーに見えないカバーが社外品である)。

2013年くらいまでのモデルは、プロトタイプなのか、アンビエントライトはあるものの、手抜き感が伝わる。

 

故障経験・整備性

〇故障
故障は、致命的ではないものの多々発生している。
故障の詳細や維持費については下記を参照 〇整備性
バッテリー交換の際に、バッテリーを固定しているクランプボルトが奥深くにあり、エクステンドレンチで緩めないといけないのは非常に不便である。
ワイパーのゴムだけ交換できず、ブレード毎になるのは無駄である(互換品のブレードを買えばゴムだけ交換可能)。

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